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zoom RSS ティル・ブレナー / 穏やかなハンサムガイは赤ワインの味わい

<<   作成日時 : 2004/12/04 02:00   >>

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 11月6日、Motion Blue yokohamaで観たティル・ブレナーのライブは、心地好い音楽に因って身も心も解きほぐされてゆく、まさに「Mellow」なひと時だった。声も、トランペットとフリューゲルホーンの音色も、演奏される作品も、そして容姿も、彼の全てが柔らかで甘い。

 その甘さが決してくどく成らないのは、彼の音楽のボディがしっかりしている所為だろう。まだ若いが、口うるさい聴き手を黙らせるテクニックを持ち、加えて切なさと云う程良い酸味も持ち合わせている。それらがミクスされたこの日の彼の「味」は、僕にはまるで極上の赤ワインの様にも思えた。
 
 彼の母国ドイツは、日本では赤より圧倒的に白ワインが有名だ。僕はその情報量の少ない?赤ワインの中に、果たして彼の音楽に当て嵌められる様なワインが有るのか、それとも無いのか、無責任ながら存じ上げない。

 でも爽やかで青い林檎の様なリースリングでも無く、とろける甘さの蜂蜜の様なアイスワインでも決して無く、赤に拘るのは、彼の音楽に確実にしっかりとしたタンニンを感じるからだ。

 タンニンとは葡萄では主に皮に多く含まれる渋味成分のことで、皮も種もそのまま仕込まれる赤ワインならではの特徴的な味のひとつであり、中でも好き嫌いがはっきりと別れる部分だ。強すぎれば万人に受け入れられず、足りなければ軽く見られる。云ってみれば人間の個性や音楽の(ここでは特にjazzの)センスの様なものだろう。味わう人に依り基準はまちまちだが、好事家には必ず無くてはならない「味」として評価されるのがタンニンなのだ。


 ティルの音楽を一言で言い表すのは難しい。2004年作の最新アルバム『THAT SUMMER』は夏をテーマにボサノバ風味に溢れているが、前作『Blue Eyed Soul』はJazz Hip Hopの色合いが濃い作品だった。また2000年作の『CHATTIN' WITH CHET』では“Everything Happens To Me”を斬新にドラムンベースで聴かせたり、チャック・ローブのjazzyなナチュラルトーン・ギターと彼の奥方であるカーメン・クエスタの甘くも涼しげなコーラスをフィーチャーしたスペーシーなAORチューン“TELL ME”もきっちりときめ、そして当然に正統な4ビートやバラッドも奏でるなど、各作品が実に様々な味で構成されている。だが、口に含めば評価は至って簡単だ。バランスが整っている。美味い。

 良いワインには決して人工的な味は加えられない。ブレンドする方法もあるが、仕方なく着いて許されるのは樽香くらいなものだろう(勿論好みはあるだろうが)。栽培家の方々の熱意と努力に支えられる部分は大いに有るにせよ、その土地の土壌と水はけ、葡萄の品種、そして勿論その年の気候が味を作る。もし日照が足りなければ葡萄の甘みは足りず、糖分がアルコールに変わるワインにとっては致命的となる。要は味は育ち様、過ごし方で決まってしまうと云えるかも知れない。

 ティルは恵まれた音楽一家に生まれ、9歳から始めたトランペットで僅か数年の内にクラシックとジャズで様々な賞を受賞し、15歳でドイツ連邦ジャズオーケストラに迎えられるなど、年少の頃からの輝かしい経歴を持ち、双方のジャンルで一流のアーティストとして認知されている。またマイケル・フランクスばりの甘い歌声に、長身でハンサム。日本では伝わり難いが、本国では相当なスターであるとのことだ。実際この日も、傍目にも瞳孔がハートになっていると思しき女性ファンが、何人も見受けられた。


 男の僕から見ても、惚れてしまいそうになった(?)、この日のライブのエピソードも、ひとつお話しておこう。

 演奏が終盤に差し掛かり、彼はセサミストリートのキャラクター、カエルのカーミットのマペットを取り出した。するとそれを片手にはめ、そのままもう一方の手でフリューゲルホーンを吹き始めた。子供の頃に両親がテープに録ってくれたと云う彼の愛聴曲、“BEIN' GREEN”だ。

 カーミットが嘆く。「ずっと緑でいながら過ごすのも楽じゃないんだよ、葉っぱみたいな色で毎日いるなんてさ。」カーミットは自分が緑で居るのがつまらないらしい。他のものが、赤や黄色や金色で鮮やかに彩られるのが羨ましい。緑は人々の暮らしに溶け込み過ぎていて、少しも気に掛けて貰えないんだと、目立たない自分を悲しんでいる。

 それでもカーミットは、こう考えるに至るのだ。「でも緑は春の色だよ。爽やかで優しい。海の様におおらかになれる。山は大切なものだし、木は空高いんだ。そう、僕は緑だよ。それでいいんだよ、だって緑は美しいんだもの。僕は緑でいたいんだ。」

 天才少年だったティルは、周囲の同年代の子供達の中では、やはり少し浮いた存在だったと云う。当然の様に、音楽の趣味ひとつとってみても周囲の13〜15歳の一般の少年達のそれとは違う。「まるでエイリアンの様に思われていた」らしい。

 でも、彼のパパやママは「緑は緑でいいんだよ」とティルに教えた。ティルは"BEIN' GREEN"を聴き、歌い、幼い頃から繰り返し繰り返し歌詞の意味を考え、様々な思いを巡らして来たに違いない。

 ティルはこの可愛らしくも深い愛聴歌を歌い終えると、にっこりと、そして優しく笑った。その少しはにかんだ笑顔に、彼って、温かい家庭の中で本当に大切に、大事に育てられたんだろうなぁと、思わずには居られなかった。そしてその時僕は、言い表しようの無い程優しく、穏やかな気持ちに包まれていた。


 恵まれた家庭で正しい音楽教育を受け、天分の才能が真っ直ぐ育ったのだから、彼を葡萄に喩えるならば、畑も間違っていないし種も間違っていない、きちんとした手入れをして育て上げられた最上級の葡萄だ。彼の葡萄で作られるまだ若いワインは、今飲んでも十分に美味しい。でも、この先10年20年熟成させてたって、必ずもっともっと素晴らしくなるだろう。

 僕はこの先も、このMellowな味わいのワインを、抜栓し続けてゆけるのが楽しみでならない。今は柔らかく、すっと舌の奥に消えてゆく彼のワインの余韻には、今後年を経るとともに、ますます深いタンニンが、程良く足されてゆく筈だから。

チャッティン・ウィズ・チェット
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